身体を売って生きてきた碧眼の少女をめぐるお話。歪んでしまった心を愛で取り戻す人間ドラマ
西洋風の世界観を軸に、2人のヒロインを中心とした重厚なストーリー。
由雅なおは先生単行本『青い瞳の少女』をレビュー。初回の読み切り掲載が2007年なので由雅なおは先生の作品としてはかなり初期のもの。
サンプル
詳細レビュー
中世ヨーロッパ風の世界観、少女が身体を売るのは当たり前
西洋風のたたずまい、貧しい少女が身を売って生きるのは当たり前の街で流れる噂。身分に不釣り合いなほどに美しい少女、所詮は噂だと思っていたその少女が目の前に……
懇願されるままに少女を買い、そして抱く青年・ウィル。
ウィルがヒロイン・シルヴィアを妹として引き取ったところで第一夜は終了。元々は読み切りとして描かれた第一夜なので、ここだけで完結するように作られています。噂話のモノローグから始まり、ラストでその後の顛末が語られる寓話風の構成。読み切りとしても完成度が高いです。
境遇の似た2人のヒロイン
連載化した第二夜ではもう1人のヒロイン・ナタリーが中心のストーリー。その屋敷では使用人として働く少女たちを毎晩指名し”寵愛”と称して性処理をさせていた。その使用人の1人であるナタリーはかつて家で虐待を受けていたこともあり、そこから救い出してくれた主人に特別な思いを抱いています。
金で何でも買えると思っている館の主人・クラウスはかねてよりシルヴィアを狙っており、ついにウィルの元からシルヴィアを連れ出して半ば強制的に館に迎え入れる。そこで2人のヒロインが邂逅します。
最初は嫉妬心を抱いていたナタリーですが、言葉を交わすことでお互いの境遇を知り、次第に友情を深めていきます。そしてこの友情が物語を動かす鍵となります。
愛を知って芽生える自我
当初は身を売って生活する自身の境遇から自我をほとんど持っていなかったシルヴィアですが、ウィルとの出会いによって芽生えた感情から人が変わったように成長します。ナタリーの助力で館から逃げ出すことに成功したあと、ナタリーを助けるために再び館へ戻る決意をする。
ナタリーもまた、主を愛することの意味を見つめ直し、人間不信に陥り自暴自棄気味になっている主の目を覚まさせるために反抗。シルヴィアとの出会いによる成長が伺えます。
こうした2人の行動がクラウスの心を動かし、物語はクライマックスへ。
総評
絵 | やや古風ながら線が細めの繊細で美麗な絵柄。汗と肉感がすごい。 |
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ストーリー | 歪んでしまった人間を愛で救う王道ストーリー。代償は大きかれど最後にはハッピーエンド。 |
性的嗜好 | 純愛と背徳的なシーンの入り乱れる展開。反抗的ではないながらも一途な思いを胸に気丈に振る舞うヒロインが魅力的。 |
読みごたえ | 少し重めのストーリーなので内容は濃い目。Hシーンが占める割合は高い |
由雅なおは先生の作品の中でも初期の作品のため、今現在とは少しだけ画風が違いますが、滴る汗が特徴的などエロい作画は健在。
ストーリーは王道的で読みやすく、様々なシチュエーションで描かれるHシーンも自然な流れで読む分にも致す分にも良い本。いちゃラブもレイプもあり。
タイトルからはシルヴィアを中心とした話の展開を想像していましたが、表紙に書かれている英語版タイトルを見ると”Blue Eyed Girls”と複数形で書かれている通りシルヴィアとナタリーのストーリーでした。(作中での描写はありませんがカラーの表紙ではナタリーも瞳が青い)
連載では2人はそれぞれの道を行き終わりますが、描き下ろしでその後再会するシーンが描かれます。最後はみんなハッピーエンドのささやかな大団円という感じの作品でした。
作品データ
タイトル | 青い瞳の少女 |
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作家 | 由雅なおは |
コンテンツ種別 | 単行本・長編(全12話+描き下ろし) |
出版年 | 2010(連載期間:2007-2010) |
出版社 / 掲載誌 | オークス |